求人文章みても、響く人と全く反応しない人がいるのは何故か?――脳のフィルター「RAS」から考える採用

「数多くの失敗が、何となくの確信につながった。」
私自身、これまで1,000人ほどの面接を経験し、経営者としても採用や人材育成に向き合ってきました。
求人原稿を考える時間。人材を育てるための準備。採用基準をどうするか。
一日の限られた時間の中で、経費と売上のことも考えなければならない。
採用だけを考えていればいいわけではありません。
そんな中、ある地域で求人を出した際、応募数が都内の同エリアでもダントツだったと、後から求人広告の担当者から聞きました。
自分では「それほど多くない」と感じていたのですが、目標値の120%をクリア。
「これなら、あとはシフトを調整すれば何とかなるかな」
そう考えていました。
もちろん、応募者の中には辞退する人もいました。
それ自体は想定内です。
しかし、そこで私は一つのことに興味を持ちました。
「なぜ、この求人に反応する人と、全く反応しない人がいるのだろう?」
その背景を考える中で、私が着目したものの一つが「RAS(網様体賦活系)」でした。
今回は、採用活動における求人文章をテーマに、RASという視点から「なぜ同じ言葉でも、人によって反応が違うのか」を3回に分けて考えてみます。
① 脳の「情報フィルター」としてのRAS
私たちは、日々膨大な情報に囲まれています。
求人情報だけを見ても、
給与。勤務地。仕事内容。勤務時間。福利厚生。会社の特徴。
すべてを同じ強さで意識しているわけではありません。
その中で、脳が重要だと判断した情報に注意が向きやすくなる仕組みの一つとして知られているのが、RAS(Reticular Activating System)です。
ここで重要なのは、
「求人に何を書いたか」
だけではありません。
「その人にとって、今その情報が重要なのか」
ということです。
同じ求人文章でも、ある人には目に留まり、別の人にはほとんど残らない。
そこには、本人が置かれている状況や、これまでの経験、関心、期待などが関係しています。
②「見えている」と「自分に関係がある」は違う
例えば、求人に、
「裁量権があります」
と書いてあったとします。
ある人にとっては、
「自分で考えて仕事をしたい」
という希望と結びつくかもしれません。
一方で別の人にとっては、
「仕事を丸投げされるのでは?」
と感じるかもしれません。
同じ言葉を見ているのに、受け取り方が違う。
ここには、その人がこれまで経験してきたことや、その時に何を求めているのかという違いがあります。
つまり、
「求人文章を読んでもらう」
ことと、
「自分に関係する情報として受け取ってもらう」
ことは同じではありません。
採用担当者が、
「この言葉なら響くだろう」
と思っていても、求職者の側では全く違う意味になっている可能性があります。
③ ターゲットのRASに「指名手配」を出す方法
求人文章で狙った人材に気づいてもらうには、「誰に向けた情報なのか」が伝わる言葉を入れることが重要です。
ただ魅力的な言葉を並べるのではなく、相手が普段感じていることや、今求めていることと結びつく言葉を選んでいきます。
1. 「悩み」を具体化する
「風通しの良い職場です」
ではなく、
「会議で意見を出しても、なかなか反映されない。そんなもどかしさを感じていませんか?」
と書いてみる。
抽象的な「風通しの良さ」ではなく、具体的な経験や状況を言葉にすることで、「これ、自分のことかもしれない」と感じてもらいやすくなります。
2. 「ベネフィット」を具体化する
「スキルアップできます」
だけでは、何が変わるのかが分かりません。
例えば、
「実務を通して専門スキルを身につけ、3年後には一人で仕事を任されるレベルを目指せます」
など、そこで働くことで「自分に何が起こるのか」を具体的にする。
人によって求めているものは違います。
だからこそ、「スキルアップ」という言葉だけではなく、その人が求めている変化まで考えることが重要です。
3. 「問いかけ」を使う
求人文章の中に問いかけを入れることも、一つの方法です。
「今の給与に、自分の努力は見合っていますか?」
「もっと自分の考えを仕事に反映させたいと思ったことはありませんか?」
こうした問いかけは、読み手自身の経験や状況を振り返るきっかけになります。
ただし、問いかければ必ず人が動くわけではありません。
重要なのは、その問いが「今の自分」に関係しているかどうかです。
だからこそ、求人文章では、
「何という言葉を使えば刺さるのか?」
だけではなく、
「今、この人は何を気にしているのか?」
「この人にとって、何が自分事になるのか?」
まで考える必要があります。
RASを意識するということは、単にキーワードを仕込むことではありません。
「誰に、何を、自分のこととして認識してもらいたいのか」
を考えることなのです。
私が実際に経験した求人文章
ここで、少し変わった例を紹介します。
私は北海道出身で、田舎育ちです。
毎朝、時期になるとホタテを食べて学校に行っていました。
そんな経験もあって、ある地域でスナックのマスターをしていた頃、コロナ禍の時期に、こんな求人文章を書いたことがあります。
「北海道の新鮮な活ホタテを、シーズンになったら一緒に食べながら、日頃のストレス発散話に花を咲かせませんか?」
一般的な求人文章とは、かなり違います。
しかし、こうした文章だからこそ、ある人には「何となく気になる求人」として目に留まる可能性があります。
もちろん、ホタテを書けば人が集まるという話ではありません。
重要なのは、
「誰に向けて、何を伝えるのか」
を考えたとき、企業が用意した一般的な言葉ではなく、自分たちだからこそ持っている具体的な情報が、人との接点になることがあるということです。
採用でRASを考えるときに大切なこと
求人文章を書くとき、
「どうすれば応募が増えるか?」
だけを考えると、条件や魅力をたくさん並べたくなります。
しかし、応募数が増えれば採用成功とは限りません。
むしろ重要なのは、
「どんな人が、その求人を自分に関係する情報として受け取るのか」
ということではないでしょうか。
RASという視点から考えると、求人文章は単なる情報提供ではありません。
相手が今どんな情報を重要だと感じているのか。
その情報と、自社が提供できる仕事との間に、どんな接点があるのか。
そこを考えることが、採用文章を設計する一つの手がかりになります。
そして、ここからがさらに重要です。
たとえ求人文章が相手の注意を引いたとしても、
「理解した」
ことと、
「自分に関係があると認知した」
こと。
さらに、
「応募する」
ことは、同じではありません。
認知から行動へ移るには、また別の構造があります。
この違いをどう考えるのか。
それについては、次回のRASの話で、もう少し掘り下げてみたいと思います。
今回は、Empathy Action 12S Framework™の活用領域の一つである「採用活動」を軸に、RASについて考えてみました。
また次回、ここでお会いしましょう。
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